ホールについてAbout Hallパイプオルガン
すみだトリフォニーホールのオルガンの特徴
すみだトリフォニーホールのオルガンは、18世紀のドイツ・バロック時代のオルガンの特徴を基本にしたタイプです。製作したのは、ドイツのザクセン地方の古都ドレスデンに工場を持つイェームリッヒ社です。同社はオルガン音楽の最大の巨匠とされる、あのヨハン・セバスチャン・バッハと関係が深かったオルガン製作の伝統を受け継いでおり、その特色がここに生かされています。
このオルガンの規模は、4,735本のパイプが、66個のストップに纏められています。ストップとは、音色の可能性を引き出す装置のことで、さまざまな音を発するパイプ群を、同じ系列の音色ごとに何十本かずつ集めたものです。ストップの数が増えれば、それだけ音色の組み合わせの可能性が大きくなり、表現力が豊かになります。演奏台には、手で操作する手鍵盤が3段と、足で扱う足鍵盤(ペダル)が1段備えられています。
また、すみだトリフォニーホールは、新日本フィルハーモニー交響楽団の本拠地になっていますから、このオルガンは、オルガン独自の力を充分発揮すると共に、オーケストラの響きとも良く調和するように設計されていることが、大事な特色の一つです。
パイプオルガン概要
- 演奏台
- 三段手鍵盤、足鍵盤
- キーアクション
- メカニカル方式
- ストップアクション
- ダブルアクション
- 補助装置
-
カプラー
II/I, III/I, III/II
I/P, II/P, III/P
コンビネーション256
メモリーカードシステム - ストップ数
- 66
- パイプ総数
- 4,735本
- 設計・製作・組立
- Jehmlich Orgelbau Dresden(イェームリッヒ オルガン工房 ドレスデン)
ヤマハ株式会社 - 整音
- Friedrich Kunze
Eberhard Dobberkau
- パイプ総数の秘密
- 鍵盤の周りを取り巻くたくさんのパイプ、これだけでも圧倒されますが、実はパイプオルガンのパイプはこれだけではないのです。
舞台からは見えない裏側にたくさんのパイプがあり、トリフォニーホールのパイプオルガンではその数、実に4,735本にもなります。
これらのたくさんのパイプによって、荘厳な響きが生まれます。
注)右はオルガンの裏側にあるパイプの写真です。
パイプオルガンストップリスト
パイプオルガンとはこういう楽器です
〈楽器の女王〉と呼ばれるパイプオルガンは、一人のオルガニストで、優に百人もの編成のオーケストラに匹敵する力を発揮できる楽器です。
もともとオルガンという言葉は、生物の器官 (Organo) を指すものですが、楽器の名称としてこれが使われたのは、パイプオルガンが、楽器の中の楽器として、もっとも完成された存在だったからでしょう。昔、小学校や幼稚園などにあったオルガンは、パイプオルガンとは別の種類の楽器です。音を出す原理から見ると、ハーモニカを大きくしたようなものですから、パイプオルガンではなく、リードオルガンに分類されます。また、最近ではエレクトーンなどの電子楽器が普及して、電子オルガンという呼び名が定着しつつありますが、これもパイプからではなく電気的に音が作り出されるのですから、パイプオルガンとは区別しなければなりません。
では、パイプオルガンとは、どういう楽器かと言うと、次の三つの条件を備えているものを指します。先ず、1)音を出す本体としてのパイプ(笛)があり、2)そのパイプを鳴らすための圧力を加えた空気を送る送風装置を備え、そして、3)演奏のための鍵盤がある。以上の三つの条件が必要です。
オルガンの歴史はとても古く、その発明は西暦紀元前まで溯ると言われています。ピアノは、せいぜい三百年ほどの歴史しか持っていないのに比べれば、大変な年月の長さです。そのため、一口にオルガンと言っても、その中味は、オルガン音楽を発展させてきた時代や地域などに応じて、実にさまざまです。それを大きく分けると、時代では、ルネッサンス時代、バロック時代、ロマン派時代、地域では、イタリア、ドイツ、オランダ、フランス、イギリス、スペインなどが代表的で、それぞれ特色ある流派を形成してきました。
コンソール(演奏台)
- 手鍵盤
- 第1鍵盤 ハウプトヴェルク
第2鍵盤 ポジティフ
第3鍵盤 シュヴェルヴェルク - 足鍵盤
- ペダル鍵盤は、オルガンの低い音域を担っています。
- ストップ
- 音色を選択するノブ。このオルガンには66種類のストップがあります。
- モーター
スイッチ - 送風機室のモーターを作動させるもの。昔は、オルガンの後ろで大勢の人達がふいごを踏んで風をつくりました。
- 譜面台
- メモリー
ボタン - 選択した音色をメモリーするとき、またはメモリーを演奏時に呼び出すときに使います。
- メモリー
カード - メモリーをカードに保存することができます。
- モニター
- オルガンとオーケストラの共演時、指揮者の合図をモニターで確認します。
- スウェル
ペダル - ペダル操作によって、第3手鍵盤の音量を調節するもの。
- クレッシェンド
ヴァルツェ - ロールペダルの操作で、ストップが増減し、音量の調整ができます。
- カプラー
ボタン - 手鍵盤とペダルないしは手鍵盤どうしを連結をする仕組み。
イェームリッヒ社の概要
イェームリッヒ社は、ドイツ・ザクセン州の州都ドレスデンにあり、1808年の創業以来、200年の歴史を誇ります。創設者はゴッドフリード・ジルバーマン(18世紀に作曲家J.S.バッハと共に活躍したオルガン製作者)の孫弟子にあたります。現在まで同じ血統一族により受け継がれ、ジルバーマンの残したオルガンの修復に尽くすとともに、千台を超すオルガンを教会やホールに製作してきました。
この伝統は旧東独の時代にも現社長により受け継がれ、ドレスデン聖十字架教会やベルリンのコンツェルトハウス(シャウシュピールハウス)のオルガン製作、フライベルク大聖堂やドレスデン旧宮廷教会のジルバーマンオルガンの修復作業が特に有名です。
バロック様式を礎としロマンチック様式を融合したオルガン作りが特徴で、あたたかく美しい音色、繊細さと豊かさを併せ持つ表現力が魅力です。世界最古の歴史を持つオーケストラが活躍するザクセン州のオルガンならではの合奏能力も特筆すべきものと言えましょう。